工具性能をさらに引き出す内部給油という選択

クーラント吐出用ポンプの高圧化による冷却効果と切りくず切断性能の向上は、切削工具の長寿命・安定加工に対し重要な役割を果たします。一般的に内部給油タイプは外部給油タイプに比べ、高速・高密度なクーラントを刃先に供給することができ、これにより刃先を効果的に冷却し、チップ寿命の向上を図ることができます。また、吐出口や流路を工夫することでクーラントの拡散を抑制し、切りくず生成部に的確に吐出することにより、切りくず絡まりを抑制することができるため、生産性向上、高品位加工にも効果を発揮します。
このようにメリットの多いクーラントホルダですが、課題もあります。従来のクーラントホルダは、クーラント供給用の配管部品をホルダに接続することが必要不可欠で、場合によっては操作性の悪化や配管部品に切りくずが絡まる恐れがあります。特に作業スペースが狭い自動盤においては、これらは大きな課題でした。その解決策の一つとして、当社では配管部品レスでマシンからの直接給油に対応した「JCTMシリーズ」の開発に着手しました。

クーラントホルダは、ただ単にクーラントが流れる穴を開ければよいというわけではなく、その設計思想に各メーカーの技術とノウハウが詰まっています。
このノウハウの一つが、流体シミュレーションの技術です。流体シミュレーションとは、流体力学を応用した解析・シミュレーション手法のことで、自動車や航空機などの空気抵抗の計算をはじめ、パイプ中を流れる水の計算などにも活用されています。流体シミュレーションを精緻に行うためには、高い知識・スキルと、高性能な演算処理が可能なハードウェア・ソフトウェアの活用が欠かせません。
JCTMシリーズでは、切削性能評価や流体シミュレーション（図１）を活用し、エネルギー損失を抑え、流速が高く、高密度のクーラントを刃先近傍に吐出できる流路設計を行っています。その結果、切りくずの安定性および切断性向上を実現することができました。

JCTMシリーズでは、配管部品によるトラブルを防止するために、配管レスでの内部給油タイプにも対応するように設計をしました。その特長は、ホルダの基準面に設けたクーラント供給口にあります(図2)。刃物台が直接給油タイプに対応している場合は、この供給口を通してクーラントをホルダ内部に供給できるため、配管部品の接続は不要となり、通常のホルダと同じように刃物台に取り付けるだけで、クーラントホルダとしてご使用いただけます（図3）。そしてもう一つの特長は、供給口の周囲に楕円形状の溝を設けていることです。この溝を設けることでホルダ取り付けのバラつきや供給口の位置ズレに対して柔軟に対応することができ、操作性の向上につながっています。

※JCTMシリーズは、配管式にも対応しており、マシンの仕様や配管方法に合わせて、さまざまな接続方法も選択可能です。

JCTMシリーズは、流体シミュレーションを用いて、外径、溝入れ、突切りの各ホルダ用に吐出の角度・位置を最適化しており、多様な加工において高い冷却効果と切りくず処理性能の向上に効果を発揮し、長寿命・安定加工に貢献します。

直接給油対応 自動盤用ホルダ「JCTMシリーズ」は、「お客様に切削工具とともに喜びを届けたい」という想いを込め、長寿命加工・優れた切りくず処理性能の実現・操作性の向上に着目して開発した製品です。JCTMシリーズは、切りくず処理や操作性の向上、コスト削減といった生産現場で発生するさまざまな課題を改善できる製品だと確信しています。本製品が多くの生産現場でその実力を発揮し、お客様の喜びの種となることを期待するとともに、今後もより多くの生産現場でお客様に笑顔を届けられるよう、独創的な製品を開発していきます。